における対談の紹介

当院長「金上 功」と最新診療事情を取材されている記者の方との「うつ病」に関する治療への手がかりをテーマに対談形式で行ったインタビュー内容をご紹介したいと思います。

うつ病の臨床研究を続けてきた医師・金上 功氏に聞く

現在はストレスフル社会です。日常生活の中には、人間関係からテクノストレスに至るまで、ストレッサー(ストレスの原因)があふれています。「憂うつ」「不安」などのうつ症状は、日常誰もが経験しうることです。しかし、うつ病は「死を考える心の病気」であり、全身に様々な身体症状を引き起こす深刻な病気です。高齢者の方は身体症状を患うと発症率が高くなる傾向が見られます。また、小学生や中学、高校生などの子供にも見られ、不登校や中途退学の背景にもなっています。
 そこで、産業医学や精神医療の場で幅広くうつ病の臨床研究を続けてきた当院長「金上 功」とうつ病の最新診療事情を取材されている記者の方との「うつ病」に関する治療への手がかりをテーマに、対談形式で行ったインタビュー内容をご紹介したいと思います。


うつ病の臨床研究を続けてきた医師・金上 功氏に聞く

思い悩まずに医師の診断を受ける

副作用少なく効果高い薬もある

記者
 うつ病は心の病気なんていわれてますね。本当にそのくらい、かかりやすい病気なのでしょうか。

ほとんどが「うつ」と知らずに苦しんで....

金上
 うつ病の症状は、日常誰もが少なからず経験しているものです。
 うつ病患者は世界に一億人程度、日本では約六百万人と推定されています。一生のうち五人に一人はかかる病気です。しかし、日本で治療を受けているのは、四十万人ほどです。ほとんどの人は自分がうつ病とは知らずに、本人も家族も深い苦しみを味わっています。WHO
(世界保健機関)は「うつ病は二〇二〇年までに感染症に代わり、さらに虚血性心疾患、悪性腫瘍、脳血管疾患などをしのぎ、人間の幸福に悪影響をもたらす主要な疾患になる」と報告しています。
記者
 うつ病は心の病気ですね。原因は何なのでしょうか。

女性は出産・育児とストレス要因が多い


 心の問題はまだ分からないことが多いです。発症原因もいくつか仮説があり、私は現象面としては脳内物質のアンバランス、心理面では生育歴の中の喪失体験だと考えています。喪失経験とは幼少期に親を亡くした、あついは見捨てられた、虐待や不適当なしつけを受けたことなどで、最も大切な幼少期に親から「受け入れられなかった」ことに基づく人間不信が原因の一つと考えられます。
 発症の誘因では死別、リストラ、人間関係や仕事のストレス、出産のほか、意外ですが昇進、引っ越しなども知られています。脳血管障害、内分泌疾患、ある種の薬物などが原因になっているうつ病も多く見られます。
記者
 
昇進はうれしいはずなのに。
金上
 
結構、完全主義の人が多く自分の考えをすぐ変えられないのですね
記者
 
女性の育児ストレスは大変なものですし、これからは女性の社会参加もますます進み、女性が社会に果たす役割も重要になってきます。女性が感じるストレスも多岐にわたり、見過ごせなくなってきています。そういうことからも、うつ病は女性に多いのですか

金上
 
おっしゃる通りですね。女性には、育児や生理、家庭の人間関係、職場の地位など男性よりストレス要因が多いです。
 女性の社会進出はどんどん進んでいますので、女性の「心のケア」に本格的に取りくむべきだと思っています。うつ病人口は女性は男性の一・三倍から一・五倍といわれます。

医師との明確な治療方法を
本人と家族が十分に理解しよう
記者
 うつ病では周りの対応の仕方も重要ではないかと思いますけど。

 患者さんご自身と家族がこの病気をよく理解することが大切です。本人が何かやろうとしてもできないのがうつ病です。周りが怠け心のせいだと考えて叱咤激励することは禁物です。この病気は思い詰め、死を考える病気ですから。
 また、会社や学校を辞めるなどの重要事項の決定は保留する必要があります。適切な判断がしづらいからです
記者
 そういう中での朗報として、最近はうつについての研究や治療法も進んできたとうかがいました。
金上
 その通りです。大いに希望を持っていただきたいですね。思い悩むのではなく、とにかく専門の医師の受診をお勧めします。専門の医師のカウンセリングやアドバイスを受けることが大切であると考えます。
 また、うつ病の治療薬もどんどん進化して、最近は薬でかなり治るようになりました。副作用が少なく効果の高い薬が次々と開発されています。ぜひとも、完全に治すことを目指してください。
記者
 思い悩まずに、まず専門の医師に診てもらうことですね。
金上
 体の病気と同様、それがポイントです。
 中には一週間以内に治る人もいますが、通常は数か月を要します。患者さんはいつ治るか不安でいっぱいです。明確な治療方針を、本人及び家族に十分理解してもらい、安心感を持っていただくことが最重要となります。
記者
 専門の医師の診断が大切だと分かりました。
記者
 今日は大変勉強になりました。ありがとうございました。




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